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東京高等裁判所 平成2年(ネ)1586号 判決 1991年3月19日

控訴人

神谷商事株式会社

代表取締役

神谷一男

訴訟代理人弁護士

佐藤博史

高橋一郎

被控訴人

三浦篤

訴訟代理人弁護士

内田雅敏

竹岡八重子

主文

一  原判決主文第三項中控訴人に金一一万七一〇三円の支払いを命じた部分を消す。

二  右部分に関する被控訴人の請求を棄却する。

三  その余の部分に関する本件控訴を棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審を通じて三分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人の各負担とする。

事実

第一当事者双方の申立て

一  控訴人

1  原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二当事者双方の主張

当事者双方の事実上の主張は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(1)  原判決二枚目裏六行目の「正社員となり、」を「正社員に採用されると同時に」と、同三枚目裏一〇行目の「早番勤務」から同一一行目の「業務命令」までを「この命令」と、同四枚目裏一〇行目の「撤回するとはできないし」を「撤回することはできないし」と、同五枚目裏二行目の「のでああつて」を「のであつて」と、同八枚目表四行目の「都労委の」を「都労委に」と、同一〇行目の「方法」を「方法の変更」と、同一〇枚目表二行目の「警告した」を「警告をした」とそれぞれ改める。

(2)  同一二枚目表七行目の「生活生活時間」を「生活時間」と改める。

(3)  同一六枚目表二行目の「ビリーヤド」を「ビリヤード」と、同裏一行目の「業務」を「業務命令」と、同一七枚目表一行目から二行目の「内容証明郵便を送付し」を「内容証明郵便にして送付し」とそれぞれ改め、同三行目の「掲示した。」の次に「)、」を加え、同裏二行目の「などど」を「などと」と改める。

第三証拠関係(略)

理由

一  当裁判所は、被控訴人の本訴各請求(被控訴人に始末書の提出を命ずる処分の無効確認の請求を除く)のうち、賃金カットの対象となった未払賃料の支払いを求める請求は失当であるが、その余は正当としてこれを認容すべきであると判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。

(1)  原判決二〇枚目表末行の「科済旨」を「科する旨」と、同二一枚目表三行目の「、同6、以上は」を「及び同6の事実は」とそれぞれ改め、同裏五行目の「その原本)、」の次に「甲第一〇八号証、」を加え、同二二枚目表一行目の「全趣旨」の次に「及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第九二号証」を加え、同三行目の「営んでいるおり」を「営んでおり」と、同末行の「七月一九日」を「七月一四日」と、同裏九行目の「出たり場合」を「出たりした場合」とそれぞれ改め、同二三枚目表九行目の「これを認め、」の次に「一一月二〇日に被控訴人に対して」を加え、同裏五行目の「掲載すと」を「掲載すると」と、同九行目の「場所にあるこによる」を「場所にあることによる」と、同二四枚目表六行目の「知らないのか旨」を「知らないのかとの旨」と、同二五枚目裏一行目の「証人吉永彰吾の証言」の次に「及び前出乙第四二号証」を加え、同三行目の「一一月二七日」を「一一月二八日」と、「同日に発売され」を「前日発売され」と、同五行目の「同月二八日」を「さちに」と、同二六枚目裏四行目の「貼布」を「貼付」と、同二七枚目表七行目の「乙第四号証」を「甲第四号証」とそれぞれ改める。

(2)  原判決二八枚目表九行目の「組合は」を「このような態様の被控訴人の就労は公休日を除き一二月一八日まで(一一日間)続いたが、同月一九日、被控訴人の早番就労をめぐる問題について都労委の事情聴取が行われた際、控訴人が組合に対し「(組合が妨害を止めて)遅番の人員募集が可能になり、遅番勤務要員が入ったら被控訴人を早番勤務へ変更してもよい。」と提案したことを受けて、組合は、同月二二日」と改め、同一〇行目の「原告を」の次に「同月二三日から」を加え、同行から末行の「一二月二二日付け」を「同月二二日付け」と、同末行の「原告が」を「被控訴人は、同月二三日は有給休暇を、二四日は公休日を取得し、」と、同二九枚目裏一行目の「自分ことが」を「自分のことが」とそれぞれ改める。

(3)  原判決二九枚目裏五行目の冒頭から同三二枚目表末行までを次のように改める。

「1 右認定の事実によれば、本件命令が発せられたのは控訴人と組合との間の労働紛争が激化していた時期であったうえに、本件命令は、被控訴人に早番を命ずる通知をしてからわずか九日後の、末だ被控訴人が早番に就かない時期になされたものであって、被控訴人の希望に沿った早番勤務を覆すものであり、それにもかかわらず、控訴人には、当初の通知に則した態度を維持するための努力に欠けるところがあり、かつ、被控訴人の理解と協力を得るための控訴人の対応も不十分であったということができる。しかし、右事実から判断される以下の各事情、すなわち、従前の早番及び遅番に対する人員の配置の状態からは、遅番に対する必要な配置人員が何名であったのかを的確に把握することが困難であり、したがって、その当時被控訴人を遅番に配置することが無用であったと断定することはできないこと、控訴人は、組合の抗議の結果「アルバイトニュース」に求人広告を出すことができなくなったために、人員の補充をするめどが立たなくなっていたこと、被控訴人を遅番に当てることに決めたのは、門脇を採用する前のことであったから、被控訴人を遅番にまわすために、ことさら門脇をボーリングの早番に誘致したとはいえないこと、遅番の勤務は、早番に較べると、時間帯の点では不利であるが、給与の点では少なくとも一ヵ月三万円程度有利であり((人証略)によって明らかである)、したがって、労働者の立場からいって早番勤務が遅番勤務よりも有利であるとは一概にはいえないこと、被控訴人は、遅番勤務者から頼まれたためであったとはいえ、自らの意思によって遅番勤務を引き受け、七月中旬以降遅番勤務を続けてきたことを斟酌すると、控訴人が本件命令を発したことをもって権利の濫用であったということはできず、また、前認定の諸経緯及びその当時の状況をすべて考慮しても、本件命令が「アルバイトニュース」への掲載に関する組合の行動への報復としてなされたものと認めることは困難であり、他にこの事実を認めるに足りる確かな証拠はないから、これをもって不当労働行為に該当するものと認めることもできない。」

(4)  原判決三二枚目裏四行目の「原告」から同三三枚目表五行目の末尾までを「前認定のとおり被控訴人は、右期間中遅番の勤務をしなかったのであるから、右カットされた賃金の支払いを求めることはできない。そして、控訴人は、その間自らの判断によって早番の勤務をしたけれども、この行為は、本件命令に反し、かつ控訴人の再三の警告に逆らってなされたものであって、これをもって、被控訴人が控訴人との間の労働契約に基づく労務に従事したものということができないから、被控訴人は、その賃金を請求することもできない。そうすると、被控訴人の右賃金一一万七一〇三円の支払いを求める請求は理由がない。」と改める。

(5)  原判決三三枚目表七行目の冒頭から同一〇行目の末尾までを削り、同一一行目の項番号を(一)に改め、それに続く「ところで、」を削り、同裏一一行目の冒頭に「(二) 被控訴人が一二月一日から同二五日まで遅番の勤務をしなかったことは前認定のとおりであり、この事実は、就業規則三〇条七号の所属上司又は長の指示に反する行為に該当することが明らかである。」を加える。

(6)  原判決三四枚目表一行目の「12」を「11」に改め、同四行目の「一二月一日」の次に「以降に」を加え、同五行目の「しかし」から同裏四行目の「であること、」までを「しかし、前説示のとおり、本件命令は、権利の濫用であるということができず、また不当労働行為に該当するものでもないが、それらに該当するとの疑いがなかったわけではなく、被控訴人に対する対応の点においても不十分であるなど、前認定の情況のもとにおいてその法律上の評価において微妙な問題を包含するものであり、したがって、被控訴人がこれに抵抗する行動をしたことにつき一概に被控訴人を責むべきものとはいえないこと、被控訴人は、遅番の勤務に就かなかったことにつき、前述のように賃金カットを免れないこと、右二9 10 11の各事実につき、」に改める。

(7)  原判決三四枚目裏一一行目の「被告会社」から同三五枚目表一行目の「ものであるが、」までを削り、同二行目の「このような」を「前認定の」に改め、同三行目の「重きに失し、」の次に「その裁量の範囲を逸脱するものであって」を加え、同五行目の号番号を(三)に改め、同行の「降格」から同六行目の「懲戒権を濫用」までを「懲戒権の濫用」に改める。

二  よって、原判決主文第三項中控訴人に一一万七一〇三円の支払いを命じた部分を取消し、右部分に関する被控訴人の請求を棄却し、その余の部分に関する本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 橘勝治 裁判官 小川克介 裁判官 南敏文)

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